労務の基礎をやさしく解説! 人事・若手社員のための労働基準法入門シリーズ②(2025/9/9)
労働基準法シリーズの第2回は、「労働契約と労働条件の明示」について解説します。
会社で働くにあたって最初に交わす「労働契約」は、働き方の基本となるとても大切な約束です。
人事担当者はもちろん、若手社員の皆様にとっても、自分の労働条件がきちんと明示されているかを確認することは、安心して働くために欠かせないポイントです。
労働契約とは?
労働契約とは、労働者が労務を提供し、使用者がその対価として賃金を支払うという約束です。
一般的には「雇用契約」と呼ばれることもあります。
労働契約を結ぶときは、口頭での合意でも成立しますが、トラブルを防ぐために書面で条件を明示することが法律で義務づけられています。
労働条件の明示が必要な項目(労基法第15条)
労働基準法第15条では、使用者(会社)は労働契約を結ぶ際、以下の労働条件を書面で明示しなければならないと定めています。
- 労働契約の期間(有期・無期)
- 就業の場所、従事すべき業務の内容
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務の有無
- 賃金の決定・計算・支払い方法、締め日・支払日
- 退職に関する事項(解雇事由を含む) など
これらが記載されていないと、のちに「そんな条件は聞いていない」というトラブルの原因になりかねません。
ありがちなトラブル例
- 面接時に「残業はほとんどない」と言われたが、実際は毎日残業がある
- 契約書に退職に関する条件が書かれておらず、辞めたいときに揉めた
- 賃金の支払い方法について事前に確認がなく、思ったより控除が多かった
こうした問題は、労働条件をしっかり明示していれば防げるケースが多いのです。
人事担当者・若手社員が意識すべきこと
- 人事担当者は、契約時に必要な条件を漏れなく説明・明示することが必須です。
- 若手社員は、契約書をよく読み、わからない点はそのままにせず確認する姿勢が大切です。
「書面で確認する」という習慣を持つだけで、働きやすさが大きく変わります。
Q&Aコーナー:労働契約のギモン
Q1. 契約書をもらえなかった場合、どうすればいいですか?
A. 労基法第15条により、会社は労働条件を書面で明示する義務があります。契約書や労働条件通知書を交付してもらえるよう求めましょう。万が一応じてもらえない場合は、労働基準監督署に相談できます。
Q2. 契約書に書いてある内容と、上司に口頭で説明された内容が違う場合は?
A. 基本的には「書面で明示された内容」が優先されます。口頭の説明と異なる場合は、必ず確認して書面を修正してもらうことが大切です。
Q3. アルバイトやパートにも労働契約書は必要ですか?
A. はい。労働基準法は正社員だけでなく、パートやアルバイトにも適用されます。労働条件が明示されないまま働くことは避けましょう。
ポイントまとめ
- 労働契約は会社と社員の基本的な約束事
- 労働条件は労基法第15条に基づき、必ず書面で明示しなければならない(受け手の希望がある場合等一定の条件を満たせばメール等可能)
- 契約書を確認し、不明点は必ずその場で質問することがトラブル防止につながる
